上達に近道はないと言いますが、観察と修正と繰り返しが上達への最短のルートだと思います。これは楽器、園芸、社交ダンスなど、何をやるにしても共通だと感じます。社会人になってから7個以上の習い事をしてきた筆者の経験と勉強から、趣味の上達方法をシェアします。
好きなものでも、苦手なところはある。
たとえば、私だと楽器の速弾きはとてもとても苦手です。体育は5段階評価で大体3だった学生時代。走るのはすごく遅いし、球技ではボールが思った方向と距離にいきませんでした。素早く体の動きを制御するのが不得意なんですね。
音楽は大好きだし、チェロを弾くのは大好きなんですが、アレグロで16分音符だと全部の音がちゃんと鳴りません。曲がちゃんと弾けないとやっぱり面白くないんですよね。
「じゃあ、今ちょっと頑張ってできるようにしちゃえば、その後の人生は一段上のレベルで楽しめるね」ということで、人生で初めて(!)速弾きができるように練習することにしました。
少し具体的な到達目標を設定する。
速弾きと言ってもどのくらいが弾ければいいのか?アレグロで16分音符を確実に弾けるようにしよう、ということで1分間に四分音符を120回打つテンポで16分音符をきちんと弾けるようにする、という目標を設定しました。
日々の練習で10分でもいいから時間を取って練習する。
ほぼ毎日1~2時間チェロの練習をしているのですが、その中に速弾き専用の練習枠を10分取って、その間だけはひたすら速弾きの練習をしています。
自分のレベルに合ったところからスタートする。
とりあえず目標のテンポよりちょっと遅いテンポでメトロノームに合わせて16分音符を弾いてみました。弾けません。ちなみに16分音符の練習のために使っているのは、教本で今習っている曲より先の曲で、アレグレット(アレグロより遅め)で16分音符が出てくる「ガボット」です。早くから練習しておけば、この曲を習う頃には弾けるようになっているはず、という魂胆です。
テンポを徐々に落として弾ける速さを探っていき、1分間に四分音符を60回打つ速さからのスタートとなりました。目標はこの倍の速さです。
自分のアウトプットを観察する。
テンポ60で練習してみても、音が出るのが遅れたり、音が間延びしたりするところがありました。音が出るのが遅れたな、と感じたら、どこで遅れたかを考えます。弦を移るところや弓を返すところで遅れや間延びが生じていました。
1個ずつ直していく。
まず1音に集中して修正していきます。私は同時に2つ以上のことに気を配って直せないからです。練習している曲の部分の中で最初につまづくのは、弦を移った部分でした。音が遅れて出ています。
うまくいかない原因を考えて、そこに気を付けてやってみる。
ではなぜ弦を移ったときに音が遅れるのか?実は速いところの弦の移り方は直近のレッスンで先生に教えてもらっていましたが、それが適切にできていなかったのです。教えてもらった内容をもとにどのタイミングで、どの程度弓を使うかなど微調整をしながら、遅れなくなるまでその練習をします。
そして次につまづく箇所で観察と修正、その次につまづく箇所で…と繰り返していきます。
今の段階での合格ラインを決めて達成する。
テンポ60でその練習箇所が4回繰り返してミスなく弾けたら合格、と心の中でなんとなく決めています。
次のレベルで合格する。
テンポを70に上げて練習します。つまづく箇所はテンポ60のときと大体同じでした。タイミングなどの調整をして合格ラインに持っていきます。
できないときはレベルの設定幅を小さくする。
どうしても合格ラインに持っていけないときは、急にレベルを上げすぎたのかもしれません。テンポ80で全然追いつけず玉砕したので、テンポ72、76、というようにレベル設定を細かくして練習しました。
継続する。
これを繰り返し、この練習開始から2週間くらいでテンポ96でギリギリ合格できるかできないか、という状態になっています。最近はテンポ80からスタートしているので、最初の頃から比べると、いきなり16分音符で弾けるテンポは確実に上がっています。
何かができないとき、単純にそのための筋肉が十分に育っていないということも原因としてあり得るので、先生に教えてもらった通りのフォームなどで継続して練習していたらそのうちできるようになることもあります。たとえばフィギュアスケートや社交ダンスは真っすぐ立てることが基本中の基本ですが、脊柱起立筋やお腹周りの筋肉などの姿勢を真っすぐに保つのに必要な筋肉が発達していないと、一歩踏み出した(滑り出した)途端にグラグラしてしまいます。
だから継続していくことで必要な筋肉が必要十分に鍛えられる前に諦めたら、もったいないのですね。私は脳の鍛え方も筋肉と似ていると感じます。繰り返すことでその動作のための神経回路がきちんと保存されて使えるようになるという仕組みだったと思います。
でもね、数日できなかったなんてときも、気に病む必要はないのです。筋肉は、実は毎日トレーニングするより3日おきくらいにトレーニングしたほうが効率よく大きくなると言われています。また、脳の神経回路だって、少しランダムな間隔で遭遇する物事のほうが効率よく刻まれるのだそうです。
だから、また何事もなかったかのように続ければ大丈夫。私も気負わず、諦めず、楽しみながら続けてみます。